マルバクワガタ
(オオバコ科 クワガタソウ属)

四阿山(あずまやさん) 【7月下旬】

(同左)
 四阿山は群馬県北西部、長野県との県境にあって、標高2354mの山である。山頂部は亜高山帯に属し、ここは内陸で冬季の降雪も日本海側の山ほど多くはないので、2m近い低木が生えており、山頂近くまで、まばらにはなるものの針葉樹が生育している。樹林帯の下部はクマザサが生い茂っている。本種は山頂部に小規模な群落をつくっていたもので、草丈は10cm内外で、ともすると見逃してしまいそうな感じであった。たまたま足を止めたとき、ふと足元を見ると、青紫色の小さな花が咲いていたので、あわてて撮影したものである。よく見ると、花は2本の長いおしべを持ち、花弁4枚で左右相称である。春先に身近でよく見かける「オオイヌノフグリ」と同じつくりだ。オオバコ科クワガタソウ属の花は、このような特徴的な形態を持つので判断しやすい。この仲間には、より標高の高い高山帯の岩礫地や草地には「ヒメクワガタ」や「ミヤマクワガタ」があり、低地には「タチイヌノフグリ」「オオイヌノフグリ」がある。
 なお本種の分布は長野県中部〜東北部、群馬県北西部と狭い範囲に限られている。