木曽駒ケ岳              【8月中旬】
 日本の高山の場合、標高2500m以上は強風や乾燥のため樹林帯が発達せず、植生は小低木や草本に限られるようになる。これを高山帯としており、ここに特徴的に見られるのがハイマツである。韓国や日本を含めた東アジア及びロシア極東地域を含めたユーラシア大陸の東側に分布しており、シベリヤなどの極地方では低地でもハイマツ林が見られるそうである。どうやらハイマツは気温や降水量が十分な環境では、他の植物との競争に勝てないので、条件が悪く他の植物の生育が難しいため、結果として競争が少なくなる高山帯に避難してここで分布を広げたようである。当然のことであるが、標高がさらに上がって2700〜2800m近くになると、ハイマツも生育できない環境になる。そこには岩がゴロゴロしており、わずかな草とコケや地衣類しか生えていない。
 ハイマツは約1万5千年ほど前の最終氷期の末期から、気温の上昇とともに次第に分布を拡大しはじめた。日本では南アルプスの光(てかり)岳が分布の南限である。従って、それより西の山では見られない。また富士山はハイマツが分布を拡大した後に生まれた新しい火山なので、やはりハイマツは分布していない。代わりに高山帯に相当する5合目付近ではカラマツが風雪や乾燥などの環境条件で低木化してしまったものが見られる。

千枚岳(南アルプス)         【8月中旬】
ハイマツの中の登山道を登ってゆく登山者たち。