高山帯のような寒冷地で、大地に含まれる水分の凍結融解作用によっておこる諸現象を「周氷河現象」という。水は氷になると体積が増えるので、岩石中に含まれる水分は凍ると岩を砕く。土中の水分が凍ると、砂礫が持ち上げられ、氷が溶けるときに移動したりする。このような水分の凍結融解作用が周氷河作用の中心であり、高山帯などの寒冷地の地形をつくる重要な要素である。周氷河作用によってできた地形を周氷河地形という。現在の日本アルプスなどの高山は氷河こそないものの、周氷河作用が働く周氷河帯である。


   赤石岳山腹に見られたソリフラクション・ロウブ    ◇

(左の四角で囲まれた部分の拡大写真
  写真は、南アルプスの悪沢岳から赤石岳に向かう途中の、大聖寺平と呼ばれる周氷河性の平坦な斜面をとおる登山道で撮影したものである。左の小赤石岳のやや傾斜のある斜面にソリフラクション・ロウブと呼ばれる周氷河地形が広がっている。地形の特徴が特にはっきりしている四角で囲まれた部分を拡大したのが右の写真である。水分の凍結融解作用によって斜面を移動する岩塊が集合して、耳たぶ状の小でっぱり(ロウブ)を形成しているのがわかるだろう。


   木曽駒ケ岳山頂部の階状土   ◇
  高山の山頂部の風衝砂礫地の土壌成分は、周氷河作用によって移動する岩礫が粒の大きさごとに集まることなどによって様々な模様ができる。写真はこのうちの一つの「階状土」と呼ばれるもので、地面に階段状の段々が形成されている。


◇    本白根山の鏡池に見られる亀甲状土    ◇


(写真をクリックすると拡大表示されます。)
 鏡池は白根山の古い火口の一つである。この池の湖底には、写真に示すように直径1m〜2mの大型の亀甲状土が見られる。これも湖底にたまった安山岩のかけらが、凍結融解作用によるふるいわけを受けた結果形成されたものだという。
 他には、南アルプスの茶臼岳から上河内岳に向かう稜線部に天然記念物に指定された亀甲状土があるが、これは既に岩石の動きが止まってしまった、いわば化石構造土であるらしい。現在も岩石の動きが見られ、これだけの規模を持った亀甲状土は、他ではなかなかお目にかかれない。しかも標高が2000m程度で、駐車場から歩いても2〜3時間でたどり着ける場所にあるのは驚きである。