下の写真は、いずれもカールと呼ばれる地形で、一万年ほど前までの氷河期に形成されたものである。山頂部に降り積もった雪が氷(カール氷河)となり、斜面を流れ落ちていく時に、岩肌を削りとってしまうために、凹状のくぼ地が形成され、氷河の無くなった現在でも、その名残がアルプスなどの高山の山頂部にはあちこちに残っている。またカール内部にはモレーンと呼ばれる周囲よりやや小高く盛り上がった地形が見られる。これは氷河によって運ばれた岩などが氷河の末端近くに積み重なってできたもので、周囲より植生も豊かで緑色の盛り上がった地形として観察されることが多い。ちなみに、立山の山崎カールは、日本ではじめて氷河地形として認められたものである。
 ニュージーランド南島のアルプスには現在も氷河が残り、その周囲の山々の山頂部にはカール氷河が並んでいる。氷河期にはおそらく日本アルプスでも、ニュージーランドで見られるような光景が広がっていたのであろう。


赤石岳(南アルプス)の北沢カール
南アルプスのカールは降雪量が少ないため、北アルプスのものと比べて小さいが仙丈ケ岳や悪沢岳には立派なものがある。

薬師岳(北アルプス)の中央カール
 北アルプスの薬師岳山頂部東側には3つのカールが並んでいて、国の天然記念物に指定されている。これはその中の真中のカールで、モレーンも良く分かる。

立山の山崎カール

 日本ではじめてカール地形と認められたもので、発見者の山崎博士の名前が付けられている。しかし日本のカールの中では珍しく、山体の西側に形成されている。日本の場合、雪は西風によって山の東側に吹き寄せられるので、大規模なカールの殆どが山の東側に発達するのである。


黒部五郎岳(北アルプス)は山全体が巨大なカールである。
(鷲羽岳の中腹から撮影)

仙丈ケ岳    小仙丈カール
仙丈ケ岳山頂部には3つのカールがあるが、そのうちの一つ。小仙丈岳から良く観察できる。モレーンの盛り上がりも良く残っている。 

仙丈ケ岳    藪沢カールのモレーン
氷河がブルドーザーの様に岩や土砂を削り取り、押し流していった様子がうかがえる。モレーンの手前にあるのは改築され新しくなった藪沢小屋である。

笠ヶ岳の播隆平
笠ケ岳山荘から北東の方向には、このような光景が広がる。写真中央下よりの傾斜はあるがやや平坦な地形がカール地形の播隆平である。奥の背景は槍ケ岳(左端)−穂高連峰の山々。