蛇紋岩の山


(至仏山頂からのびる稜線沿いの光景)
  山の植物について少し詳しくなってくると、よく登場してくる「蛇紋岩」という岩石名が気になってくる。これは変成岩の一種であるが、アルカリ性が強いため超塩基性岩として知られている。そのため亜高山帯を構成する針葉樹も生育が悪く、森林限界が低下してしまうのである。またそこには他には見られない独特の植物が生えることにもなる。それらを「蛇紋岩植物」などと呼ぶ場合もあるので、植物種を判別しようとして図鑑とにらめっこしていると「蛇紋岩」という言葉に出くわすことになるのである。
 蛇紋岩の山としてよく知られているのは、岩手県の早池峰(はやちね)山、群馬県の谷川岳や至仏山である。上の写真は至仏山の頂上からのびる稜線沿いの風景を写したものであるが、蛇紋岩は風化作用を受けて表面はうす茶色になり、四角に割れた感じになっていることが見て取れよう。風化面をはがせば実際の蛇紋岩の色が現れるが、その色は暗緑色から黄緑色であり、もろく滑りやすい性質があるそうである。谷川岳の一の倉沢で滑落事故が多いのはそのためである。
 
 静岡県にも蛇紋岩の山はある。西部の三ヶ日町と愛知県との県境にある雨生山(うぶさん)である。標高3百数十メートルの低山であるが、歩いてみると蛇紋岩地帯のため植生が悪いことがすぐにわかる。周りの山よりも樹木の間隔が大きく、樹高も低い。垂直分布でいうところの山地帯にも達しない「丘」ともいうべき山なのに、マツの類が優占する相観はやはり異常な感じがする山である。

 左の写真は、5月上旬に雨生山をその北側の金山へと続く稜線上から撮影したもの。特に植生の悪い北西面の様子が分かる。